「愛することに資格がいるのか?」



 アリアハンを発って間もない頃、野営の焚火を囲んでモエギがこんな質問をした。
「アルト君てさ、好きな娘とかいなかったの?」
 アルトは澄んだ瞳をぱちくりさせた。また始まった、サーラは心の中でため息をついた。
「好きな娘かあ……昔、女の子から手紙をもらったことはあるよ」
「やっぱりそのくらいはね〜。その話詳しく聞かせて」
 モエギは興味津々といった様子で身を乗り出した。アルトは少し困ったように頭を掻いた。
「それが……俺、その時まだ子供だったからさ、手紙の意味が分からなくて」
 今でも子供だと思うが――サーラは黙って続きを待った。
「後で母さんから聞かされたんだ。ラブレターだったんだって。でも、その時にはもう手紙を捨てちゃっててさ……」
 モエギはあらら……と苦笑した。サーラは肩を落とし、一言つぶやいた。
「お前に人を愛する資格はないな」
 すると、アルトはむっとしてこう返した。
「愛することに資格がいるのか?」
 意外な問いかけに、サーラは言葉を詰まらせた。代わりにモエギが答える。
「ううん、アルト君そんなことないよ。女の子って男の子よりませてるものなの。今悪かったなあって思ってるんなら大丈夫だよ!」
 明るく微笑むモエギに、アルトも安堵の笑みを浮かべた。だがサーラは、アルトの何気ない一言が眠るまで離れなかったのだった。

お題提供:リライト