夢の続き 2



 アルトとジャックがダーマを訪ねている間、サーラはモエギとジパングに潜入するための作戦を練っていた。
 ムオルで向かう途中、この宿場で居合わせた商人は女王の補佐と直に取引をしたという。だが、ジパングのような閉鎖された島国にサーラたちが赴いても、オルテガの息子や銀の賢者といった肩書きは何の手助けにもならないだろう。追い返されるのがオチである。
「オルテガ様の名声は万国共通じゃないっていうのが、ちょっとショックだよね……」
 窓際のテーブルで向かい合うモエギは、残念そうに頭を抱えた。
「そもそも、私たちはジパングに関して知識がなさすぎる」
 宿場の主人にも相談してみると、カウンター越しに退屈そうな返事があった。
「またあそこの話かい。何でも、ジパングってのは『ガイジン』が嫌なんだと。そっちの黒髪の嬢ちゃんはともかく、姉ちゃんみたいなのは間違いなく、びっくりされるだろうな」
「じゃあ、銀髪頭に至っては人外かもね……」
 サーラとモエギは互いに苦笑した。だが、今は笑いごとではない。意気消沈する二人を見かねたのか、主人が肩をすくめた。
「おいおい、嫌つっても、それなりの用件や事情があればあちらさんも邪険にはしないだろうさ。まあ、遠くでは田舎者は入国拒否っていうおったまげた国もあるらしいがな」
 その国はその国で厄介だが、ジパングはそこまで話の分からない国ではないようだ。
 テーブルに出された干し柿を頬張り、モエギは考え込む。
「そしたら、あたしたちも何か理由を作らないと」
「しかし、単刀直入に『オーブをくれ』とは言えないからな……」
 サーラも眉間を押さえる。何か、ジパングに付け入る隙があれば良いのだが。
「ご主人、ジパングの情勢について何かご存じないか?」
 主人も暇なのだろう、カウンターを出てこちらに歩んできた。窓辺に立ち、その先に浮かぶ島国を睨む。
「……話によりゃあ、ジパングは一昔前まで、小さな部族がしょっちゅう小競り合いをしていたそうだ。結構前に力のある部族が統一したらしいが、数年後クーデターが起こった。
 その時女王になったのが、ヒミコだ」
「そのヒミコって人は、どうして女王になったの? それまでは何をやっていたの?」
 素朴なモエギの問いに、主人は首を傾げた。
「さあ、どういった経緯かは知らんよ。ただ、ヒミコってのはあの島に昔からいる『巫女』の一族だって聞いたな」
「巫女……つまりシャーマンだな。すると、何か特別な力の持ち主なのだろう」
 主人はうなずき、そのまま肩をいからせて低く毒づいた。
「そうさ。だからおれぁ思うんだよ。今あの国は、そのヒミコのせいで、何か嫌なことになってるんじゃないかってな」
 サーラの脳裏に、行商人からヒミコの品を受け取った時の感覚が蘇る。
 女王の品に、あのような禍々しい気が宿っているならば、国自体も健常であるはずがない。
 サーラたちのただならぬ様子に、主人は怪訝そうに尋ねる。
「あんたら、それでも行きたいってのかい。あの国は堅気のおれでも嫌な感じがするってのに、何で首を突っ込みたがるんだ?」
 サーラは主人に向き直り、答えた。
「あの国に、私たちが探しているものがあるのだ。それも、女王の手中に」
 揺るぎない眼差しと返答に、主人は口をつぐみ重いため息をついた。
「……しょうがねえな。おれぁ、あんたたちに話をした以上、死なれたら責任とらなきゃいけねえ」
「あたしたち、死にに行くんじゃないもの!」
「分かってらあ。だから、おれも協力してやるっつってんだ」
 あくまでぶっきらぼうな主人に、サーラはモエギと顔を見合わせ、そっと笑み交わした。
 それからしばらくしてアルトたちが戻り、四人揃った所で本格的に話し合いを行った。
 まず、島へ渡るにはサーラたちの持ち船では目立ちすぎるため、主人の厚意で小型船を貸りることになった。
 ジパングの民のもとへ潜入するための口実は、東洋人のモエギがジパングの親戚を頼ってきたことにした。もちろん親戚はいないので、故人という設定にする。
 肝心の用件は、行商人として薬草を売りに来た、と装い、品物も実際にサーラが調合した薬を用意する。これも、主人がジパング帰りの行商人から薬草がよく売れるという情報を得ていたため浮かんだ案だった。
 行商人に扮するならば、各々の武器は普段のように身に着けられない。それに関しては品物として荷物にし、潜入時に運ぶということにした。品物扱いになれば、もし検品があったとしても問題視される可能性は低い。
 作戦がまとまると、サーラたちは数日間準備に徹し、後日明朝、宿場からひっそり出航した。
 東の島には、どんよりとした暗雲が立ち込めていた。



 適当な浜辺に小型船をつなぎ、念のため邪気払いの聖水を周りに撒くと、サーラたちはまず集落を目指し出発した。
 春の陽気を受けているはずの草木はどこか沈んだ色をしており、北の方を仰ぐと、活火山から煙が絶え間なく上っている。どこか陰鬱とした空気は否めなかった。
「人工的に切り拓いた跡があんまりねえな」
 伸び放題の茂みをくさり鎌で刈り取りながら、ジャックが辺りに視線を彷徨わせる。
「文化も遅れてるっていうし、ここの人たちはあんまり国を栄えさせようっていう気はないのかな」
「これだけ小さな島国なら、他国に頼らないとそれも難しいだろうな」
 モエギやアルトも、まとわりつく草枝を押しやりながら進む。薬草の束が入った麻袋を提げ、サーラもそれに続いた。
 ――潜入後の行動としては、まずオーブを買い取ったという女王の補佐と接触しなければならない。また、直にこの国の民から話を聞いた方が良いだろう。
 原生林の中を登っていくと、水の流れる音が聞こえてきた。さらに先を行くと川の上流に辿り着き、ジャックは喜々として告げた。
「よし、この川を下っていくぞ。下流の方なら、近くに住んでいる人間が水を汲みに来たりするから、集落も近いってことになる」
 流れに沿って山を下っていくと、やがて小さな人影が見えた。傍らには桶が二つ。やはりジャックの推測通り、集落の者が水を求めて川に来ているのだろう。
 しかし、余所者がいきなり話しかけるのはためらわれる。木の陰から様子をうかがうと、人影はどうやら幼女のようで、自分の胴ほどの桶二つにたっぷりと水を汲んでいる。それを両手に持つと、よたよた林の向こうへ歩き始めた。
「どうする? あんな歩き方の子の後をついて行ったら、日が暮れちゃうんじゃないか?」
 危なっかしい足取りの幼女をはらはらと見守るアルト。ジャックは促すようにモエギの背を押した。
「え? あたしに行けって?」
 ジャックが無言でうなずく。モエギは意を決し、おそるおそる幼女に近付いていった。
「あの〜、それ、持ってあげようか?」
 背後から声をかけられ、幼女はすくみ上がり桶を落としてしまった。懸命に汲んだ水が、無残に土へ溶けていった。
「だーっ、もっと上手くやれよ!」
 小声でいきり立つジャックに人差し指を見せ、サーラは静かに諫めた。
「私たちの中で、モエギが一番自然な容姿をしているから行かせたのだろう? 黙って見ていろ」
 ジャックは不足そうに口を曲げ、再びモエギの方へ視線を戻した。
 人気のない所で他の人間に出くわしたのだ。よほどびっくりしたのだろう、幼女は声を上げ泣き出してしまった。
「ごめんね、びっくりしたよね。水ならお姉ちゃんが汲んであげるからね」
 モエギは手早く水を汲み直し、幼女のそばにしゃがみ込んだ。
「あなた、名前は何ていうの? お姉ちゃんはモエギっていって、この国に物を売りに来たんだよ」
 幼女はモエギの顔をじっと見つめ、長い沈黙の後「ムツミ」と、小さく答えた。
「そっか、ムツミちゃんだね。お家はどこ? お姉ちゃんが一緒に水を持っていってあげるよ」
 いいぞモエギ、とサーラたちは小さな歓声を上げる。モエギがちらちらとこちらに視線を送っている。全員顔を出した方がいい、ということだろう。
 ムツミという幼女は家の方角を指し、こう問いかけてきた。
「おねえちゃん、まいごなの?」
 モエギは乾いた笑い声を上げ、サーラたちを手招きした。
「そ、そうなの! でね、お姉ちゃんだけじゃなくて、他にも迷子の人たちが……」
 仕方なくサーラたちが姿を現すと、ムツミはぽかんと口を開け、硬直した。
「こ、この人たち、みんなお姉ちゃんの友達なんだよ」
 モエギの必死のフォローも虚しく、ムツミはみるみるうちに恐怖に顔をひきつらせ、泣き叫びながら逃げ出してしまった。
「俺たちって、そんなに怖いかな……」
 アルトは茫然としている。一応、全員行商人の装いをしているのだが、やはり顔立ちは明らかに外の国のものなのだろう。ジャックがアルトの肩を叩き、桶を拾い上げた。
「このくらいは予想の範囲内だっつーの。ほれ、あのちびっ子を追うぞ!」
 ジャックとアルトが走り出すと、モエギはもう一つの桶を手に地団駄を踏んだ。
「もう……ジャックが最初に出てけば良かったのよ! バカッ!」
「そうすれば、あの子はすぐに逃げ出しただろうな」
 隣でサーラが言葉を継ぐと、モエギは眉を下げて笑った。



 ムツミの後を追って林を抜けると、拓けた道に出た。草も砂利もなく、人の手で舗装された道だというのは明白だった。
 道を辿っていくと、そびえ立つやぐらと丸太の門が見え、門番らしき人間にムツミがすがりついていた。駆け寄ろうとすると、やぐらの上から鋭い声が降ってきた。
「貴様ら、何者だ! 返答次第では打つぞ!」
 見上げると、見張り番と思われる中年の男が弓を構えている。長髪を左右に奇妙な形で束ねている。
「うへえ……手荒い歓迎ですこと」
 苦笑するジャックを尻目に、サーラは声を張り上げた。
「私たちは、道に迷ったただの商隊だ! 薬草を売りにこの国へ来ただけだっ!」
 やぐらの男は弓を構えたままだが、サーラの態度にいくらか気圧されたようで、門番の男に目配せをした。門番の若い男はムツミにしがみ付かれたまま、何とかこちらに向かってきた。
「いくら商人といえども、他国の者を簡単に通す訳にはいかぬ。どういった目的で我が国を訪ねてきたのだ?」
 若い門番には、いささか怯えの色が見て取れる。モエギが進み出、作戦通り答える。
「あたしの遠い親戚が、ここジパングに住んでいたんです。けど、その親戚が病で亡くなったと知り、ゆかりのあるこの国に良い薬をと思い、はるばるバハラタからやって来ました」
 しんみりとしたモエギの演技はなかなかのもので、門番は同情の眼差しを向けた。その足元で、ムツミも神妙な顔つきをしている。
「……して、その者たちも仲間か?」
 東洋人であるモエギとはうって変わって、サーラたちを観察する目つきは油断がない。モエギは深くうなずく。
「生まれはみんな違いますが、信頼出来る人ばかりです。特に彼女の薬草はよく効くんです」
 注目が集まると、サーラは麻袋から適当な薬草をいくつか取り出した。
「どれも、私が調合したものです。これは外傷の治癒力を高めるもの、これは酔い覚まし、あとは安眠、鎮静作用など、実用性と効果は確かなものです」
 出来るだけ丁寧な口調で説明すると、門番はやぐらの男と視線を交わし、軽く一礼した。
「そうか……。遠国からはるばる、ご足労であった。しかし、くれぐれも出過ぎた真似をするでないぞ」
 やぐらの男も、弓は下げたものの決して表情を緩めてはいない。サーラたちも礼をして、ようやく門をくぐることを許された。モエギはジャックから桶を取り上げると、ムツミに渡した。
「怖い思いさせて、本当にごめんね。これ、ちゃんとお家に持っていくんだよ」
 ムツミは怖々と桶を受け取ると、「ありがとう」と言い残し、やはりおぼつかない足取りで去っていった。
「けっ、ちゃっかりしてやんの。あのちびっ子」
「でも、ちゃんとありがとうって言ってたじゃないか」
 アルトが小さな背中を優しく見送る。それでもジャックは、穏やかでない歓迎に釈然としない様子だった。



 集落は山の中の盆地に存在しており、わらぶき屋根と高床式の民家が数十戸、その奥では『宮』と呼ばれる、一際大きな建造物が異彩を放っていた。おそらく、あそこが女王ヒミコの住まいなのだろう。
 サーラたちはとりあえず宿を探したが、それらしき建物は見当たらない。納屋でも倉庫でも良いから寝床を、とあちこちの民家を訪ねても、どこもサーラたちを受け入れようとしなかった。
 既に陽は傾いている。残すは人が出払っていた民家と、例の『宮』である。
「あそこは、いわゆる王族の住む所だろ? 他の友好的な国ならともかく、外人の俺たちが行ってもなあ……」
「しかし、行ける所は当たってみるしかない」
 弱気なアルトを励まし、宮へと続く石段へと向かう。宮の手前まで来ると、ほっそりとした年頃の娘が反対側から歩いてきた。斜陽に照らされる表情は、ひどく沈んでいる。
「はあ……やけに暗い顔してんな」言うなりジャックは娘に歩み寄った。
「お嬢さん、どうかしたのかい? そんな顔してたら、せっかくの美人が台無しだぜ?」
「またあいつは……」
 モエギが拳を震わせる。それをなだめつつ、サーラは娘の返答に耳を澄ました。
「放っておいてください……もう、わたしは……」
 娘は言葉を切り、嗚咽を漏らし始めた。何があったのかは知る由もないが、ただごとではないようだ。
「そんな泣かれたら、ますます放っておけないじゃないの。ちょっと訳を聞かせてくれないかなあ」
 軟派と変わりのないジャックを肘鉄で黙らせると、モエギが間に割り入った。
「ごめんなさい、こいつのことは気にしないで。あたしたち、薬草を売りにこの国に来たんだけど、泊まる所がなくて……」
 同じような歳の娘が外の国からやって来たというのが、娘の心に引っかかったらしい。慌てて涙を拭い、モエギやサーラたちを見渡した。
「……外の国の商人たちは、皆宮で寝床を世話してもらっているはずです。
 だけど、わたしは、あそこに住む人たちは皆嫌いです。ヒミコ様も、カツヒコ様も……!」
 娘はどうして、とつぶやいた後、あっという間に集落の方へ走り去っていった。
「あの人は、何か女王にひどいことをされたのかな」
「さあな……。だが、精神的にまいっていたのは確かだ。明日あたり、あの娘を訪ねてみよう」
 サーラはひび割れた娘の声に胸を痛めた。数カ月前まで、自分も似たような状態だったのを思い出したのだ。
「あの女の人、ヒミコ様と、カツヒコ様、って言ってたよね。カツヒコっていう人も、この国の偉い人なのかな……」
「案外、そのカツヒコっていうのがあの娘に手を出したとか」
 再びモエギの肘鉄を喰らい、ジャックはその場にうずくまった。サーラは大きくため息をついた。
 民家を当たった時も、ここの民は皆外人への嫌悪感より、厄介ごとに関わりたくない、といった様子だった。
 一体何が、ジパングの民を、あの娘を困らせているというのだろうか。サーラはまとわりつく夜風にひとつ、身震いした。



 宮の衛兵は、夕刻に訪ねてきたサーラたちをうとましげに相手したが、行商人の宿の世話は宮でするようにというのが『カツヒコ様』のご命令だ、と強調し、憮然と宮の扉を開放した。
 宮中は、新しく建造されたのか、もしくは大幅に修繕されたのか、白木の床や柱が灯に照らされ美しい。女中らしき若い娘が現れると、履物を脱ぐように言われた。サーラたちは土間に各々の靴を残し、裸足で女中の案内に従いついて行った。
 客間に着くと、女中は引き戸を開け、中から分厚い寝具を出し四人分を慣れた手つきで用意してくれた。立ったままそれを眺めていたサーラは、思い切って尋ねてみた。
「私たちは、この国のことはよく知らないのだが……カツヒコ様とは、どういった御仁なのだ?」
 女中はサーラの無骨な口調に面喰らったが、すぐに返した。
「カツヒコ様は、このジパングの宰相でございます。女王様は人目をはばかるため、政は事実カツヒコ様が指揮をとっております」
「俺たちのような商人との商談も、そのカツヒコ様が?」
 アルトの問いに、女中はゆっくりとうなずく。
「この国が今の体制になってから、カツヒコ様が直々に外交を行うようになったのです。あなたがたも、商談でここにいらしたのであれば、カツヒコ様に話が行くよう、取り次いでおきます」
「そりゃ、ご丁寧にどうも。そういやあ、同業者からちらっと小耳に挟んだんですけどね。その、女王様が少し前に、大層高額なものを買い取られたとか」
 それとなく探りを入れるジャックは、商人の息子だけあり口調もさまになっている。一方、女中は困ったように首を傾げた。
「確かに、一月程前、行商人の方がお見えになりましたが、わたくし共は詳しいことは存じませぬゆえ」
 様子からして、とぼけている訳ではないようだ。女中は食事を用意する、と退出していった。
「……つまり、宿場で会ったあの商人が取引したのは、そのカツヒコっていう宰相か」
「で、カツヒコは宰相、つまり女王の補佐っていうことだね」
 アルトとモエギがうなずく。ジャックは敷かれた寝具にどっかり腰を下ろすと、頭を乱雑に掻いた。
「あーあ、どいつもこいつも堅っ苦しいこと。女の子が元気ない国は疲れる!」
「何を訳の分からないことを。とにかく、オーブを買い取った主と会えることになったのだから、これからどうする?」
 子供のように寝転ぶジャックをたしなめ、サーラは嘆息した。確かに、この国はどうも肩が凝る。
「オーブは、この世界をバラモスの手から救うために必要なものだ。そのカツヒコとやらに会ったら、もう小細工する必要はない。直談判してオーブを譲ってもらおう」
「サーラ、でも相手はオーブと引き換えに大量の財産をあの商人に渡していただろ? こっちも何か代わりになるものがないと」
「オーブと引き換えっていったら、さすがに薬草はちょっとね……」
 運良く交渉の糸口はつかめたものの、いざとなると難題である。サーラたちが揃って頭を抱えていると、突然ジャックが身体を起こした。
「オイオイ、本業を忘れたかお前ら? オレたちゃ薬売りじゃねえ、戦いが生業だろうが。さっきのかわい子ちゃん、何て言ってたか覚えてるか?」
 宮への途中で会った娘のことをしつこく引き合いに出すジャックに、モエギは付き合っていられないと顔をそむける。アルトが口元に手を添えた。
「あの人、確か女王……ヒミコや、カツヒコが嫌だって、泣いてたな」
「そう。平民が上の人間にあんだけ不満募らせてんだぞ? この国で何か困ったことが起こってるってこった」
「では、その解決と引き換えにオーブを? しかし、取引相手は例のカツヒコだろう?」
 疑問を投げかけるサーラに、ジャックは面白がるように口の端をつり上げた。
「丁度いいじゃねえか。まずはそのカツヒコって野郎のツラ、拝んでやろうぜ」